日医報告書で浮上した「かかりつけ医」巡る課題㊦

日本医師会(日医)は11月2日の定例記者会見で、かかりつけ医に関する日医の考えをまとめた報告書を公表した。その中で、2016年から実施している「日医かかりつけ医機能研修制度」では今年10月現在、延べ約5万6,000人の医師が研修に参加したと強調した。同制度では、かかりつけ医機能として①患者中心の医療の実践②継続性を重視した医療の実践③チーム医療、多職種連携の実践④社会的な保健・医療・介護・福祉の活動の実践⑤地域の特性に応じた医療の実践⑥在宅医療の実践─の6つを挙げている。

かかりつけ医の要件の「見える化」が焦点に

日医かかりつけ医研修制度に冷ややかな意見も

具体的には基本、応用、実地の3つの研修から構成。基本研修は、日医生涯教育認定証の取得が要件。応用研修は、日医が行う中央研修など規定の座学研修を受講し、修了申請時の前3年間において、規定の11項目より10単位以上を取得することが要件。実施研修は、学校医や時間外診療の実施・協力、訪問診療の実施など16項目の社会的な保健・医療・介護・福祉活動、在宅医療、地域連携活動から2つ以上を実施して10単位以上を取得することが要件だ。3年間でこれらの要件を満たした場合、都道府県医師会から有効期間が3年の修了証書または認定証が発行される。

これに対し、医療関係者の間からは「形式だけを整えたようなもの」との冷ややかな意見がある。日本プライマリ・ケア連合学会認定の「家庭医療専門医」のように、総合医的な診療能力を持つ医師かどうかを試験で見定めた資格のほうが患者にとってわかりやすいとの指摘もある。同学会の家庭医療専門医研修プログラムは世界家庭医機構(WONCA)の国際認証を得ており、日医かかりつけ医機能研修制度より上位レベルの研修内容だという。

「地域における面としてのかかりつけ医機能」を提唱

この他、日医の報告書では以下のようなことを説明している。

●医療機能情報提供制度を国民に分かりやすい内容に改め、国民がその制度を活用し、フリーアクセスで適切な医療機関を自ら選択できるよう支援する。

●各医療機関は自らが持つ機能を磨くとともに、他の医療機関との連携を通じて「地域における面としてのかかりつけ医機能」を発揮し、地域におけるネットワークで対応を行う。それこそが、まさに「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」である。

●「地域における面としてのかかりつけ医機能」を持つためには、多くの医療機関が算定できるように、財政中立ではなく、今後さらに診療報酬上での評価のほか、補助金などの活用が不可欠。

●感染症発生・まん延時(有事)における対応について、地域医療体制全体の中で感染症に対応する医療機関をあらかじめ明確化し、国民が必要とするときに確実に必要な医療を受けられるようにする。

医療機能情報提供制度かかりつけ医機能に修正要望

医療法などではかかりつけ医機能として以下の8項目の報告が必要としている。(1)日常的な医学管理及び重症化予防(2)地域の医療機関等との連携(3)在宅医療支援、介護等との連携(4)適切かつ分かりやすい情報の提供(5)地域包括診療加算の届出(6)地域包括診療料の届出(7)小児かかりつけ診療料の届出(8)機能強化加算の届出──である。

これに対し、日医の報告書は▽(1)~(4)は具体的に確保されている機能の内容が曖昧▽(5)~(8)は診療報酬上の項目がそのまま使用されており、国民が医療機関を選択するにあたって分かりやすい形にしていくための検討が必要であると指摘した。

この8項目については、日本病院会(日病)の相澤孝夫会長が11月2日に加藤勝信・厚生労働大臣に手渡した「『かかりつけ医機能』に関する提言」でも修正を求めている。▽(1)~(3)はわかりづらい▽(4)は医療機関として当然のことである▽(5)~(8)は診療報酬の届出として整理され不適当である──と指摘。その上で、(1)診療時間内外問わず自院で地域住民に対応する、もしくは他の医療機関と連携して対応する(2)特定の領域に偏らない広範囲にわたる全人的医療を行う(3)総合的な医学的管理を行う──の3項目に整理し直す必要があるとした。

提言では、かかりつけ医機能を提供する医療機関が発揮する役割の範囲は、狭めて決めることなく、「包括的な概念」として示すことが必要との考えを述べた。また、自主的に届け出た医療機関がかかりつけ医機能を果たすことにより、円滑な地域医療連携体制の構築が可能になるとした。さらに、日病での議論の中で、かかりつけ医機能に関して、国民も医療者も周知、認識が不十分であることも広がりを見せないことの原因の一つとの指摘があったと報告している。

「必要な時に必要な医療」「緩やかなゲートキーパー機能」

財務省が求めているかかりつけ医の登録制については、日医の報告書でも言及していたフリーアクセスの制限につながるため、日医の松本吉郎会長は11月2日の定例記者会見で、「患者の医療へのアクセス権や医師を選ぶ権利を阻害する」と反発した。官主導の医療体制づくりが進むと、自由開業制や診療科の自由標榜制に影響するという懸念もあるかもしれない。

しかし、医療機関に対する患者の「選択の自由」を保障するフリーアクセスは、医療の機能分化の阻害や、医療現場の疲弊などをもたらしてきた。そこで、「いつでも、どこでも」医療機関にかかれるのではなく、「必要な時に必要な医療にアクセスできる」「緩やかなゲートキーパー機能を備えた『かかりつけ医』の普及」(2013年の政府有識者会議「社会保障制度改革国民会議」報告書)を求める声が上がっている。ゲートキーパー機能とは、かかりつけ医が必要と判断した場合のみ、専門医の診療や入院医療が受けられることを指す。

かかりつけ医の議論は、その機能などの定義だけでなく、医療へのアクセスや医療システムに関わるテ―マにまで広がる。それだけに、この議論については国民にわかりやすく伝えることが重要だ。その上で、「望ましい医療」に対する国民の理解と協力が必要になる。