日医報告書で浮上した「かかりつけ医」巡る課題㊤

「かかりつけ医」に関する議論が進む中、日本医師会(日医)や日本病院会(日病)がかかりつけ医に関する報告書や提言を相次いで公表した。かかりつけ医に関する最近の動向を振り返り、課題を探ってみた。

かかりつけ医の議論が高まっている

かかりつけ医はコロナ禍によりクローズアップされるようになった。政府はかかりつけ医をコロナ診療の柱にしたが、患者が地域の身近な医療機関に相談・受診できる体制の確保に時間がかかったり、各地域で個々の医療機関が果たすべき役割が具体化されていなかったりしたため、対応は後手に回り、医療逼迫の一因になった。

このため、政府の全世代型社会保障構築会議の中間整理(5月)や「骨太の方針2022」(6月)、「新コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」の報告書(6月)は「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」の重要性を指摘した。

また、超高齢社会における医療提供体制を考えると、在宅医療の充実や、かかりつけ医機能に関する議論は避けられないとの考えは、もともと医療人の中にもあった。

「かかりつけ医の法制化」を求める財務省

一方、財務省は医療の効率化の視点から、「かかりつけ医の法制化」を求めている。財務相の諮問機関、財政制度等審議会は5月に出した「歴史の転換点における財政運営」(春の建議)で、かかりつけ医に関して次のように言及した。

新型コロナウイルス感染症が拡大する中、国民の半数はかかりつけ医がいなかったり、受診・相談センターへの電話がつながりにくかったりしたのに加え、発熱外来を実施する医療機関の公表が不十分だったことから、「我が国の医療保険制度の金看板とされてきたフリーアクセスは、肝心な時に十分に機能しなかった可能性が高い」と批判。対応策として、かかりつけ医機能を備えた医療機関を認定する制度を設け、利用を希望する患者の事前登録制度の導入を検討することを求めた。

日医は「国民の受診門戸を狭める」と反発

これに対して、日医は6月、建議について「かかりつけ医機能の要件を法制上明確化する」ことが医療費抑制のために国民の受診の門戸を狭めるということであれば認められないと反対意見を表明した。

かかりつけ医機能を考える上で必要なのが、かかりつけ医とは何かということだ。日医と四病院団体協議会(四病協)が2013年に公表した合同提言では「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」とかかりつけ医を定義した。

日医・四病協が定義した「かかりつけ医機能」

その上で、かかりつけ医機能を以下のように定義した。

●かかりつけ医は、日常行う診療においては、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。

●かかりつけ医は、自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。

●かかりつけ医は、日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。

●患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。

要は、医師としての技能を備え、地域の医師や医療機関と連携できるネットワーク力があり、患者や家族への説明・コミュニケーション力を兼ね備えた医師ということだろう。

「医療情報ネット」でかかりつけ医を見つける

このようなかかりつけ医をどのようにして見つけることができるのか。日医は今年4月、「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」という文書を公表した。国民がかかりつけ医をもつための判断材料として、「現在、47都道府県で『医療機能情報提供制度(医療情報ネット)』が整備され、全国すべての医療機関の診療科目や対応可能な治療等が公開されています。日本医師会は国や都道府県医師会と協力して、患者さんにとってさらにわかりやすい情報提供を進めます」としている。

また、かかりつけ医について「患者さんが医師を表現する言葉です。『かかりつけ医』は患者さんの自由な意思によって選択されます。どの医師が『かかりつけ医』かは、患者さんによってさまざまです。患者さんにもっともふさわしい医師が誰かを、数値化して測定することはできません。だからこそ、わたしたち医師は、心をこめてひとりひとりの患者さんに寄り添います。そうして患者さんに信頼された医師が、『かかりつけ医』になるのです」と述べている。

かかりつけ医を見極める「具体的情報」がない

かかりつけ医は患者が選択するにしても、具体的に何を基に判断すればいいのか。医療情報ネットはかかりつけ医機能に関する情報も加えているというが、患者にはわかりにくく、ただの医療機関検索サイトにしか見えない。また、日医と四病協の合同提言では、かかりつけ医の定義を理解し、その機能の向上に努めていれば誰でもかかりつけ医になれるとしている。患者からすれば、医師を見極めるための具体的な情報が示されていない。