「梅毒患者急増」の一因にマッチングアプリでの出会い

性感染症の梅毒の患者数が急増している。現在の調査方法で統計を取り始めてから、今年の感染者数は過去最多の1万人を超えた。なぜ梅毒の感染が急拡大しているのか。主な原因として、新型コロナ禍で男女の出会いの場が変わり、マッチングアプリを介した不特定多数、刹那的な性交渉の増加にあるのではないかと指摘されている。

梅毒は2010年代から増え始め、2020年にいったん減少した。しかし、2021年から男女とも増え始め、1999年に感染症法に基づく調査が始まって以降、同年は最も多い報告数(7,873人)になった。ところが今年は既に10月下旬の段階で1万人を突破するハイペースで感染が拡大している。年代別では、男性は20~40代、女性は20代で多く報告されている。性に関する話題は家族では避けがちだが、梅毒は身近なリスクになりつつある。

梅毒の第2期で赤い発疹が出ている様子(写真は日本性感染症学会のホームぺージより)

数年・数十年後には心臓や血管、神経に異常

梅毒は、梅毒トレポネーマという病原体が性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによって感染する病気。治療には抗菌薬が有効だ。

梅毒患者を多数診察していきた医師は、感染拡大の理由の1つに発見が難しいという梅毒の特徴があるという。感染から3週間ほどの第1期は、性器や口などに腫れやしこりができることがあるが、痛みがないことが多く、治療をしなくても症状は自然に軽快する。しかし、体内から病原体がいなくなったわけではないので、他の人に移す可能性がある。

治療をしないで3カ月以上経過した第2期では、手のひらや足の裏など全身に赤い発疹ができることがある。発疹は治療をしなくても数週間で消える場合があり、再発を繰り返すこともある。

感染後、数年を経過した晩期顕性梅毒では、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍が発生することがある。また、心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、死に至ることもある。

性風俗の利用歴・従事歴ある人も約4割

国立感染症研究所の調査によると、男性では性風俗の利用歴のある人が、 女性では従事歴のある人が患者の約4割を占めている。性風俗を介した感染拡大には、外国人観光客も関係しているとの説もある。円安や入国規制緩和によって外国人観光客が増加しているが、男性観光客の一部が海外から梅毒を持ち込み、風俗嬢に感染させ、それを日本人男性客に拡散したのではないかとの見方だ。

一方、性風俗との関連がない、不明とされるものなどを合わせると半数以上に上る。背景に何があるのか。ある専門家は「プライバシーに関わることなので、疫学的調査はできないが、臨床現場で見てみると、マッチングアプリなどのSNSが関係しているようだ」と指摘する。新型コロナ禍の影響で若い人は集団で楽しむ機会が減った分、SNSを利用したストレス発散が性行動の変化や活発化につながっているのではないかという。

梅毒感染を相手に伝えず性行為するケースも

マッチングアプリを利用して性交渉を持った経験のある20代の男性は、「コロナで人と出会うことが減り、寂しさから異性との遊び目的でアプリを使っている。すぐにワンナイトというふうに性行為に及ぶこともある。コンドームを付けないで性行為をして梅毒になったが、話のネタとして笑い話にしている」と話す。梅毒に感染することを軽く受け止めている人もいるようだ。

性的マイノリティーで30代の男性は「自分と同じセクシャリティーを探すのは相当苦労するが、同じセクシャリティーが使っているアプリを使えば簡単に出会える」と話す。男性は梅毒に2度感染したが、自分自身が言われたことがないからと、相手に感染の事実を伝えることはなかったという。こういったことも感染拡大の一因になっているのだろう。

女性の場合、赤ちゃんに先天梅毒もたらす懸念

女性の場合、梅毒に感染しやすい年頃と妊娠する年頃が被ってくる。感染したまま妊娠したり、妊娠中に感染したりすると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがある(先天梅毒)。妊娠している女性や妊娠する可能性のある女性と付き合っている男性は、常に自分が梅毒を移す可能性がないかということを心配しなくてはいけない時代になっている。

予防にはコンドームの使用が勧められているが、100%予防できるわけではないので、感染の可能性がある場合は検査が大事だ。各地域の保健所などでは匿名や無料で梅毒検査を受けることができる。また、他の性感染症の検査も受けられる保健所もある。梅毒感染の懸念がある人は各自治体のホームページなどを検索し、パートナーなどと一緒に検査を行ってみることだ。