高齢者「オーラルフレイル」で死亡リスク倍増

糖尿病や歯周病との関連など、口腔の健康が全身の健康に大きく関与することが、近年様々な研究で明らかになっている。口腔の健康状態の改善が、フレイル対策に重要であることもわかってきた。

フレイルとは「加齢とともに心身の活力が低下し、要介護状態になるリスクが高くなった状態」だ。しかし、早く介入して適切な対策を行えば、健康な状態に戻る可能性がある。国も今年4月から後期高齢者を対象に「フレイル健診」を始めるなど、本格的なフレイル対策に取り組んでいる。

さらに口腔衛生は、誤嚥性肺炎の発症予防、手術を受ける前から手術後までの期間(周術期)の短縮、がん治療の際に生じやすい口腔内合併症の予防・軽減、入院日数の減少などにつながるという研究結果も報告されている。

口腔の健康は全身の健康につながる

口腔機能低下が及ぼす様々な影響

東京都健康長寿医療センター研究所が実施した地域在住高齢者を対象とした大規模調査では、咀嚼機能低下が2年後のフレイルの発現や、フレイルと構音機能(いわるゆ滑舌)と関連していることが明らかになった。

研究所は歯の数、咀嚼や嚥下の困難感、舌の力、舌口唇運動機能、咀嚼力の6項目で評価し、3項目以上該当した場合を「オーラルフレイル」(口腔機能低下)と定義したところ、高齢者の19.3~20.4%がオーラルフレイルに該当した。

また、オーラルフレイルの高齢者は、そうでない高齢者と比べて、低栄養状態である割合が2.17倍高かった。「孤食」の高齢者は、そうでない高齢者と比べて、年齢や性別、独居の有無、生活習慣などの影響を調整しても、オーラルフレイルの割合が1.82倍高かった。

さらに、4年間の追跡調査によれば、オーラルフレイルの高齢者は▽死亡リスクが高まる(そうでない高齢者に比べて2.1倍)▽身体的フレイルになりやすい(同2.4倍)▽要介護認定になりやすい(同2.4倍)ことがわかった。

「口のささいなトラブル」に早期対処を

研究所は「早期にフレイルにつながる『口』にまつわる問題に気づき、対処することが重要」と指摘する。研究所ではオーラルフレイルの影響度を4つのレベルに分けているが、「特に第2レベル『口のささいなトラブル』(滑舌低下→食べこぼし→噛めない食品の増加→むせ)が重要である」としている。

フレイル予防の柱に「栄養・運動・社会参加」が挙げられるが、研究所は口腔内の環境を良好に維持する上で重要なものとして唾液の存在を挙げる。唾液は消化作用や粘膜保護作用、抗菌作用などの様々な機能を有しているが、心理的要因や服薬によって分泌が抑制され、自浄作用の低下による口腔衛生状態の悪化、むし歯のリスクなどの影響を及ぼす。口腔内が乾燥することによって引き起こされる不具合を訴える高齢者の割合は高く、咀嚼や嚥下の困難感だけでなく、4年後のフレイルの発現に影響していることも明らかになっている。

口腔機能の改善がもたらす効果

研究所ではオーラルフレイル改善プログラムとして舌圧訓練や発音訓練、咀嚼訓練などを紹介している。様々なトレーニングを行うことによって、嚥下機能、唾液分泌量や味覚の改善にもつながっており、「毎日の歯磨き習慣に、口腔のトレーニングも加えてほしい」と述べている。