新型コロナ感染者「全数把握」簡略化の問題点

新型コロナウイルス感染者の全数把握の簡略化が9月26日から導入された。65歳以上の高齢者、重症化リスクのある人、妊婦以外の若年者や軽症者は自己管理が基本となっている。

感染者が増える状況では原則入院が困難になり、医療現場からは5類への見直しや全数把握の見直しを求める声が少なくなかった。しかし、大阪府保険医協会は10月5日に発表した理事長声明で問題点を指摘する。

陽性者登録センターへの登録をPRする大阪府のホームぺージ

事実上の「受診抑制」となるスキーム

大阪府の資料をみると、今回の全数把握の見直しで、若年層や軽症者・無症状の人は医療機関にかかるのでなく、「自己にて検体採取」し、陽性ならば「陽性者登録センターにウエブ登録」が基本となっている。同協会は「感染者が医療機関にかからないことを前提にしたスキームは異常ではないだろうか」と批判する。

大阪府の資料では感染者の死亡は診断から3日以内が最も多い。今回の見直しで自己管理が基本となると、保健所登録をしないと急性増悪した場合に迅速に対応できないことが予想される。そのため、同協会は「全ての国民が保険料を支払い、『いつでも・どこでも・誰でも』医療を受ける権利があるにもかかわらず、『医療機関にかかるな』と国が方針を示すことを医師として断じて容認することはできない」と抗議する。

また、国は、新型コロナ対策が暗礁に乗り上げ、困難な状況が続くたびに対応の緩和で乗り切ろうとしているとした上で、「全数把握を止めてもウイルスの脅威がなくなるわけではない。むしろ、かえって感染状況が見えなくなり、状況を悪化させるだけではないだろうか」と懸念する。

全数把握「見直し」は感染症対策とは違う

治療薬があっても全ての感染者に有効に使えない上に、高齢者施設では感染者の留め置きなどにより、さらに感染者を増やして亡くなる人が多い。同協会は「感染を抑え込むには、気軽に検査ができ、誰でも受診・入院できる医療体制を確立していくことが重要であり、医療現場や保健所が大変だから『緩和する』『見直す』は本来の感染症対策とは違う。これでは医療現場・公衆衛生現場の『敗北宣言』になってしまう」と述べた。

「見直し」や「緩和」に対しては、医療や公衆衛生の現場で意見の相違がある。同協会は「緩和が『いい・悪い』という問題でなく、国の方針がウイルス本来の特性と医学的・科学的評価をもとに定められていないことに大きな問題がある。これまでの制度・政策の不備を直視せず、なし崩し的に進めるのでなく、治療を必要とする人が、適切に医療を受けることができるよう、国はまず医療・福祉の拡大によって生命を確実に守る体制を確立させる道を一刻も早く検討するべきである」と提案する。